前回の私のブログでは健康・厚生年金についてでした。
今回も実際に事業を支えている「人」に関係することで「雇用契約書」の整備についてお伝えいたします。
雇用契約書は、会社と従業員との約束事を明確にする大切な書類です。しかし雇用契約は口頭でも成立することもあり、
社長と従業員の信頼関係がある会社ほど、「口で伝えるけど文書では作っていない」「入社時の時だけでその後は不要」ということが多くなっています。
しかし事業承継をする際に従業員が気になることは、承継前後で自分の働く場所、仕事内容、就業時間や定年等の雇用契約書に記載する事項と合致します。
雇用契約書内容を整備して、大切な人の承継をしていくことを考えていたければと思います。
事業承継の前に見直したい「雇用契約書」
従業員が安心して働き続けられる環境があってこそ、後継者へのバトンタッチもスムーズに進みます。
その安心の指針となるのが「雇用契約書」です。
雇用契約書には、賃金や労働時間、休日、業務内容、就業場所など、働く上で重要な条件が記載されています。
会社と従業員との信頼関係を形にした書類ともいえます。
ところが、事業承継の現場では、
「昔からの社員だから契約書がない」
「内容が現状と合っていない」
「パート社員の契約更新が曖昧になっている」
といった状況が見つかることがあります。
こうした問題は普段は表面化しなくても、承継のタイミングで大きな課題となることがあります。
事業を引き継ぐということは、人との約束も引き継ぐということです。
だからこそ、承継前に雇用契約書の整備状況を確認しておくことが大切なのです。
雇用契約書はきちんと整備されていますか?
経営者の方から「うちは長年問題なくやってきたから大丈夫」という言葉を聞くことがあります。
しかし実際に確認してみると、次のような課題が見つかることがあります。
・雇用契約書を作成していない従業員がいる
・契約内容と実際の勤務実態が異なっている
・有期雇用契約の更新手続きが曖昧になっている
・就業場所や職務内容が変更されないままになっている
こうした状態では、会社と従業員との間で認識の差が生じやすくなります。
現経営者の時代は問題にならなくても、後継者に代わった途端に「聞いていた話と違う」という不満や誤解が生じることもあります。
承継後のトラブルを防ぐためにも、雇用契約書の確認と見直しは重要な準備の一つです。
雇用契約書が未整備の場合に起こるリスク
もし雇用契約書が未整備のまま事業承継を進めた場合、次のようなリスクが考えられます。
【労使トラブルの発生】
賃金や労働時間、職務内容について明確な取り決めがなければ、会社と従業員との認識に違いが生じます。
その結果、未払残業代請求や労働条件を巡るトラブルにつながることがあります。
【従業員の信頼低下】
事業承継は従業員にとっても大きな変化です。
その際に雇用条件が曖昧な状態では、「今後どうなるのだろう」という不安を与えてしまいます。
不安や不信感は、離職やモチベーション低下につながることにもなります。
【行政指導のリスク】
労働条件の明示義務に関する不備がある場合、労働基準監督署の調査などで指摘を受ける可能性があります。
法改正への対応漏れが見つかるケースもあります。
【企業価値への影響】
M&Aや第三者承継を検討している場合、労務管理の状況は重要な確認項目です。
雇用契約書の未整備や管理不足が判明すると、買い手側からリスクと判断され、企業価値や譲渡条件に影響を与えることがあります。
雇用契約書の整備は事業承継における重要な確認事項の一つとされています。
“人をつなぐ承継”を支える社会保険労務士の役割
社会保険労務士は、会社と従業員との適切な労務管理を支援する専門家です。
事業承継の前段階で社労士が関与することで、
・雇用契約書の整備状況の確認
・契約内容と実態との整合性チェック
・法改正への対応状況の確認
・必要な契約書類の整備支援
・後継者や従業員への説明サポート などを行うことができます。
雇用契約書は単なる書類ではありません。
そこには、経営者と従業員が築いてきた信頼関係が記されています。
事業承継を成功させるためには「人との約束」も次世代へ引き継ぐことが大切です。
事業を「つなぐ」とは、経営と人、どちらも大切に引き継ぐことです。 そのサポートを事業承継士である社会保険労務士にご用命いただければ幸いです。
事業承継士® 社会保険労務士 青島 有里
