中小企業経営者にとって会社は、人生そのもの、分身ともいえる大きな存在です。まさに山あり谷あり、浮き沈みと言葉にできない様々な局面を乗り越えてこられてきたのではと思います。事業の立ち上げ場面では、猛烈なパワーで引きあげてこられ、その後も紆余曲折を経て脇目もふらずにきたからこそ現在があるはずです。そのようなたたき上げの経営者にとって事業経営とは、その会社さんの本業事業のことを指す以外に何があり得るというのでしょうか?
ここでは、「事業承継」というイベントから本業とは別の事業を持つことの意味を提起したいと思います。
後継者が「ぜひ継ぎたい」と思える会社になっていますか?
社長のみなさま、これまで寝る間も惜しんで心血を注いでこられたお会社を、将来どなたに引き継いでもらいたいとお考えでしょうか。ご子息やご令嬢、あるいは右腕として信頼している従業員の方かもしれません。
しかし、事業承継で最も重要なのは、社長が「誰に継がせたいか」と同時に、後継者候補が「この会社をぜひ継ぎたい」と思ってくれるかどうかというポイントです。残念ながら、社長の想いとは裏腹に、後継者が見つからず頭を悩ませている経営者は本当に少なくありません。
事業承継の大きな壁、それは「会社の魅力」
なぜ、後継者は承継を躊躇してしまうのでしょうか。
「多額の借入金の個人保証を引き継ぐのが怖い」
「本業の将来性に不安がある」
「経営者という重責を負う自信がない」
これらの不安の根底にあるのは、突き詰めると「会社の魅力」という点に行き着きます。
後継者も一人の人間です。自らの人生を賭けて、その会社を守り、発展させていきたいと思えるだけの魅力がなければ、承継という大きな決断はできないのです。
財務基盤の弱さが後継者不在の根本原因かもしれない
では、「会社の魅力」とは具体的に何でしょうか。様々な要素がありますが、その核となるのは、間違いなく
「安定した盤石な財務基盤」
です。
毎月の資金繰りに追われ、金融機関との交渉に神経をすり減らすような状態の会社を、喜んで引き継ぎたいと思う人はいるでしょうか。財務基盤が脆弱であれば、後継者は安心して新しい挑戦もできませんし、万が一の事態に対応することもできません。
後継者が見つからない、あるいは候補者が首を縦に振ってくれない本質的な原因は、この財務基盤の弱さにあるのかもしれません。
会社の”第二の収益源”を作る!なぜ今、不動産賃貸業なのか
「財務基盤を強化しろと言われても、本業の利益を急に伸ばすのは難しい…」。そう思われるのも無理はありません。そこで私がご提案したいのが、本業とは別に「不動産賃貸業」という第二の収益源を会社で持つ、という選択肢です。
これは、ただの資産運用、副業といったレベルの話をしているのではありません。会社の未来を安定させ、事業承継をスムーズに進めるための極めて有効な「経営戦略」の話をしています。
本業とは別の安定キャッシュフローが会社を救う
不動産賃貸業の最大の強みは、景気の変動を受けにくく、「安定したキャッシュフロー」を生み出す点にあります。入居者がいる限り、毎月決まった日に、決まった額の家賃収入が会社の口座に入ってくる。
この「計算できる安定収入」が、本業の浮き沈みを吸収し、会社の資金繰りをどれだけ楽にしてくれることでしょうか。精神的な余裕も生まれ、社長は本業の経営に一層集中できるようになるという副次的な効果もあります。
攻め(本業)と守り(不動産)の経営戦略
私は、本業を「攻め」の事業、不動産事業を「守り」の事業と位置づけることをお勧めしています。
「攻め」である本業で得た利益を、将来のために「守り」である不動産に着実に投資していく。そうすることで、会社全体の経営リスクが分散され、倒産しにくい強固な企業体質が作られていきます。攻めと守りの両輪が揃ってこそ、会社は長期的に成長し続けることができるのです。
バブル経済を経験した社長様の中には、そのような話には興味はないと一刀両断される方も多いです。
不動産がもたらす3つの経営メリット
法人が不動産を持つことには、事業承継を見据えた上で特に大きな3つのメリットがあります。
メリット1:金融機関からの信用力が格段に向上する
金融機関が融資審査で重視するのは、もちろん担保価値もありますが、それ以上に「安定した返済能力」です。不動産からの定額収入は、この返済能力を証明する上で非常に強力な武器となります。
「この会社は本業以外にも安定収入がある」と評価されれば、金融機関からの信用力は格段に向上します。結果として、本業で新たな設備投資が必要になった際や、運転資金の追加融資を受けたい際にも、交渉を有利に進めることができるのです。
メリット2:本業が不振に陥った時の「保険」になる
中小企業の経営は、常に順風満帆とは限りません。予期せぬ経済情勢の変化、主要取引先の倒産、新たな競合の出現など、いつ何が起こるか分かりません。
そのような不測の事態で本業の売上が激減したとしても、不動産からの家賃収入があれば、従業員の給与や最低限の経費を賄うことができます。この「保険」があるおかげで、苦しい時期を乗り越え、事業を存続させ、再起を図るチャンスが生まれるのです。
メリット3:時間をかけて盤石な財務体質を構築できる
不動産経営は、時間を味方につける事業です。借入金の返済が進むにつれて「負債」は減り、「純資産」は着実に増えていきます。貸借対照表(B/S)が年々きれいになっていくのです。
10年、20年という時間をかけて築き上げた収益不動産と健全な財務状況は、後継者にとって何より心強く、魅力的な贈り物となるでしょう。これこそが、後継者が「この会社なら、自分の未来を託せる」と決断してくれる大きな要因となります。
もちろん良いことばかりではない。知っておくべき不動産経営のデメリット
ここまでメリットをお伝えしてきましたが、当然ながらリスクもあります。しかし、重要なのは、リスクを正しく理解し、事前に対策を打つことです。
空室・家賃下落・滞納のリスク
不動産経営で最も代表的なリスクです。これらは、入念な市場調査に基づく物件選びや、信頼できる管理会社との連携、保証会社の活用などで、その多くをコントロールすることが可能です。
想定外の出費?修繕費や管理コストの発生
エアコンの故障や外壁の補修など、建物の維持管理にはコストがかかります。家賃収入を全て利益と考えるのではなく、将来の修繕費を計画的に積み立てておくなど、事前の資金計画が不可欠です。
すぐに現金化できない「流動性の低さ」という課題
不動産は、株式のようにボタン一つで売買できる資産ではありません。急にまとまった現金が必要になっても、すぐに売却できるとは限らない「流動性の低さ」は理解しておく必要があります。
事業承継を成功に導く「不動産の力」を今から準備する
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。 事業承継は、代替わりの直前に慌てて準備を始めても、うまくはいきません。特に、会社の根幹である財務体質の改善には、長い時間が必要です。
だからこそ、社長がお元気で、経営の第一線でご活躍されている「今」から、10年、20年先を見据えた準備を始めることが何よりも重要なのです。
まずは自社の現状把握から始めましょう
最初の一歩は、貴社の財務状況を客観的に見つめ直し、「会社の健康診断」をすることです。その上で、不動産という処方箋が有効かどうか、どのような物件が貴社に適しているのかを慎重に検討していく必要があります。
専門家と共に描く、10年後を見据えた不動産戦略
しかし、これらの分析や戦略立案を社長お一人で行うのは、大変なご負担かと存じます。
私、石井英彦は、事業承継の専門家である「事業承継士」と、「不動産コンサルティング」という2つの専門性を併せ持つ、全国的にも数少ない専門家です。
社長が大切に育ててこられた会社の未来を、後継者が安心して引き継げるように。事業承継と不動産の両面から、貴社に最適なプランをご提案し、伴走支援をさせていただきます。
まずは、社長のお悩みや会社の現状をお聞かせください。どうぞお気軽にご連絡いただければ幸いです。
事業承継士、宅地建物取引士 石井英彦
