中小企業の跡取り娘として事業承継・M&Aを実体験

目次

私の歩んできた道のりと中小企業支援への想い

私は中小企業診断士の資格を取得後、父の創業した中小企業の跡取り娘として事業承継・M&Aを経験しました。この経験から「経営者の伴走者になりたい」と考えています。ここでは、私自身が歩んできた道のりを少しお話しします。

父の会社と私の原点

私の父は、社員約50名・年商10億円規模の産業機器メーカーで設計をしていました。子どもの頃から部品工場や設計室を目にして育った私は、自然と「ものづくり」や「中小企業の現場」を身近に感じていました。

社会人になってからはOA機器メーカーの販売促進部に勤め、大手から小さな町工場まで数多くの会社を訪問しました。そのとき強く感じたのは、「中小企業にはそれぞれの特色があり、力強く事業を営んでいる」ということです。この経験が、後に「中小企業をもっと支援したい」という想いにつながりました。

議員として見えたこと

その後、吹田市の市議会議員として活動する機会を得ました。行政サービスや税金の使い道を考える立場に立つと、地域経済の重要性を改めて痛感しました。

「地域経済が元気でなければ行政も維持できない」
「施策はあるけれど、個別企業に合った支援はまだ足りない」

そうした思いを強くし、私は中小企業診断士の勉強を始めました。

父の会社を承継して学んだこと

2007年、父が64歳で創業。その後、私は2015年に後継者として入社しました。社員11名の小さな組織で、「ヒト・モノ・カネ・情報」が限られるなか、受発注管理や原価管理、就業規則の整備などに取り組みました。

しかし、取引先が1社だよりの経営であったこともあり、経営環境の変化への対応が遅れ、すべてを守ることはできませんでした。最終的には、2019年に取引先に事業を譲渡するという決断を下しました。苦しい選択でしたが、「会社を次につなげる」一つの方法だったと今では思っています。

経営者の孤独と、伴走者としての使命

私自身は、跡取り娘ではありましたが、取締役にも就任していないにもかかわらず、経理全般、資金繰り、銀行との折衝までを担当しており、中途半場な立場でした。

半分経営者という経験の中で最も強く感じたのは、「経営者はとても孤独だ」ということです。もし相談できる相手や、経営の知識を共に分かち合えるパートナーがいたら、もっと早くに手をうつことができ、違った選択肢を検討できたかもしれません。

だからこそ、私は今「経営者の伴走者」として中小企業を支援する道を選びました。単なるアドバイスではなく、現場に入り込み、一緒に考え、一緒に動く支援を大切にしたいと考えています。

経営者・後継者の皆さまへ

私の歩んできた道のりからお伝えしたいことは、次の5つです。

  1. 幼少期や異業種での経験も、経営の資産になる
  2. 自社だけでなく、地域や社会との関わりも視野に入れる
  3. 資源が限られているからこそ、仕組みづくりが大切
  4. 事業を「守る」「変える」「譲る」判断も経営力の一部
  5. 経営者には、外部の相談相手=伴走者が必要

事業承継やM&Aを成功させるコツ

最後に、私自身の経験から「事業承継やM&Aを成功させるコツ」の一つをお伝えします。

  • とにかく早めに動くこと
    承継やM&Aは準備に数年単位でかかります。体力も気力もあるうちに始めることが成功の第一歩です。
  • 数字を見える化すること
    キャッシュフローや収益構造を整理するだけで、会社の魅力は大きく変わります。譲る側も引き受ける側も安心できます。
  • 理念や想いを共有すること
    会社の存在意義を明確に伝えることで、社員や後継者、買い手企業に納得感を持ってもらえます。
  • 外部の専門家をうまく活用すること
    一人で悩む必要はありません。専門家と伴走しながら進めることで、冷静かつ最適な選択が可能になります。

一般社団法人つなぐチカラは、経営者の皆さまが「事業を未来へどうつなぐか」というテーマに向き合うときに、少しでもお役に立てればと思っています。お気軽にご相談ください。 

(事業承継士®・中小企業診断士 中本美智子)

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