中小企業の事業承継においては、会社の未来を誰にどう託すかという「承継の方法」ばかりに注目が集まりがちですが実際には経営者自身の暮らしや備え、そして後継者との信頼関係づくりこそが、その根幹を成しています。
多くの経営者は、日々会社のために昼夜、平日土日関係なく働き、決して少なくない税金・社会保険料を納めています。それはまさに「罰金」のように重くのしかかる義務であり避けられないものです。社長自身はそれらの義務を果たしているにもかかわらず「役員」は雇用保険の対象外であるため、経営が立ちゆかなくなったときに「失業保険」というセーフティネットに守られることはありません。まさに天国か地獄です。そうした不安定な立場に置かれながらも、日々の経営判断を会社のため、従業員のため、社会のために貢献し続けているのが中小企業の経営者たちなのです。
だからこそ、日常のなかでささやかなオアシスがあっても良いのではないでしょうか。その一つの方法が、法人クレジットカードを使った決済です。会社の経費(会社のトラックの燃料代・電気代を筆頭に税金・資材の仕入れ・生命保険・損害保険など)をカードで支払うことで貯まるポイント、特に「マイル」は、工夫次第で社長の旅行の楽しみを超えた可能性があります。
たとえば、社長と後継者がこのマイルを使い、一緒に旅行する。非日常の空間で仕事のビジョンを語り合い、これからの経営について腹を割って話す時間を持つ。地域が変われば、物の見方も変わり、新たな着想が得られます。そうした共通体験を通し、後継者は仕事への姿勢や人との接し方を学び、現場の業務に戻ったときに、より良い影響を組織にもたらすことができるでしょう。
事業承継とは、単なる権限の引き継ぎではありません。それは、人と人との価値観をつなぎ、想いを共有し、未来をともに描くプロセスでもあります。ただの支払いが、マイルという思わぬオアシスとなり、社長と後継者が学びと成長を重ねていく。それこそが、これからの時代の新しい事業承継のあり方ではないでしょうか。
ポイ活歴22年 マイルで年4回旅する事業承継士 ユニバーサルライフ株式会社 吉田剛