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7つの観点から会社を見直すタイミングです
はじめに:承継・M&Aは“部分最適”ではうまくいかない
事業承継やM&Aは、会社の未来を左右する一大プロジェクトです。
「後継者が決まれば安心」「買い手が見つかれば大丈夫」と思われがちですが、それだけでは決してうまくいきません。
なぜなら、事業承継やM&Aは、会社という“多層的な存在”を、税務・財務・法務・労務・経営・不動産・保険といった多方面から見直し、リスクと課題を洗い出すことが不可欠だからです。
税務:承継後に大きな負担を残さないために
- 株式評価が高く、相続税や贈与税の負担が発生する
- 事業承継税制を使えばよいのか?それとも別の対策か?
- 保険や退職金とのタックスプランニングも要検討
税務の対策が後手に回ると、せっかくの承継が重荷になります。
財務:数字で語れる経営体質をつくる
- 決算書が見づらい/本当の利益が見えない
- 過剰在庫や不良債権が眠ったままになっていないか?
- のれん・資産価値の精査はM&A価格に直結
“見せる財務”と“強い財務”を両立させることが、後継者や買い手の信頼を得る鍵です。
法務:知らなかったトラブルの種がここにある
- 株主名簿の整備、名義株、未登記株式の放置
- 労働契約、重要取引契約が口約束や失効状態
- 知的財産の名義は個人になっていないか?
承継・譲渡後に紛争化しないよう、“法的見える化”が必要です。
労務:従業員の信頼をどう守るか
- 雇用契約の有無や退職金制度の不整備
- 働き方改革未対応・未払い残業・36協定未提出
- 後継者や買い手に対する心理的ハードル
従業員が安心して働ける環境があってこそ、円滑な承継が実現します。
経営:承継後の未来像は描けていますか?
- 事業の「強み」や「将来性」を言語化できているか?
- 後継者はどのように育ち、何を受け継ぐのか?
- 企業理念やビジョンをどう“つなぐ”のか?
事業の磨き上げ=承継の準備。想いと数字の両面から描く経営の地図が必要です。
不動産:事業資産か、負の遺産か?
- 土地・建物の名義は誰か?会社?社長個人?
- 遊休地や不稼働施設が財務を圧迫していないか?
- 賃貸借契約・地代・登記・建築制限の整理は済んでいるか?
M&Aでは、不動産の扱いが評価額やリスクに大きな影響を与えます。
保険:万一のときの“備え”は誰のために?
- 経営者死亡時の納税資金/退職金資金
- 保険契約の名義・受取人の整理がされているか?
- M&A後に表面化する隠れ資産(解約返戻金)の扱いは?
「何のために、誰のために」入っている保険か、今一度確認を。
おわりに:会社を“まるごと”見直すチャンス
事業承継やM&Aは、単なる「株の引継ぎ」や「会社の売買」ではありません。
それは、会社を構成するすべての仕組みを整理し、次のステージへつなぐ作業です。
今すぐ大がかりなことをしなくても構いません。
まずは一歩、「見える化」からはじめてみませんか?

(事業承継士®・中小企業診断士 中本美智子)