はじめに
みなさん、自社の事業承継についてお悩みではないでしょうか?つい先延ばしにしがちな事業承継ですが、様々な点から早期に取り組むことが重要です。特に、事業承継のタイミングで補助金や助成金を活用して自社を磨き上げることを検討する場合は計画的な準備が必要です。
多くの経営者が事業承継に前向きになれない理由としては、「身体も健康でまだまだ頑張れる」、「次の代に任せる前に解決しておくべき課題がある」、「跡を継いでもらいたいと思っている後継者候補に対して遠慮がある」などがあるのかも知れません。
しかし、事業承継は時間が解決してくれる問題ではありません。
会社の「磨き上げ」とは?
ところで会社の「磨き上げ」という言葉をご存知でしょうか?簡単に言えば、「会社の価値を今より高めるための取り組み」のことです。今の会社をより魅力的で強い企業に生まれ変わらせるために、会社の抱える課題を特定し、解決策を策定して実際に行動に移すことです。具体的には、財務の健全化、不採算な事業の見直し、社内体制の整備、人材育成や業務効率化、新商品・新サービスの開発など、多岐にわたります。
この会社の「磨き上げ」は事業承継のタイミングで後継者のために行う会社の立て直しとも言えます。経営環境がこれまでと大きく変化している中で、今までと同じやり方では今後通用しないかもしれません。だからこそ、事業承継を契機に改めて自社の強み・弱みを見える化し、課題を洗い出して改善することが大切です。後継者が「継ぎたい!」と思える会社にするためにも、早めに会社を磨き上げておくことが必要なのです。
事業承継を機に磨き上げた会社は、後継者にとっても魅力的なだけでなく、取引先や金融機関をはじめ関係者からの評価も高まります。仮に親族、従業員以外の第三者への承継となるM&Aを選択する場合でも、企業価値が高まれば自社にとって有利な条件での譲渡が可能になります。
早期の事業承継で活用できる補助金・助成金
実際に早めに事業承継に着手することで活用できる補助金・助成金にはどのようなものがあるでしょうか。近年、国や自治体は事業承継を支援するため様々な補助制度を用意しています。事業承継時に活用できる代表的な補助金としては「事業承継・M&A補助金」があります。
これは、国が実施している代表的な補助金で、事業承継やM&Aを進める際の費用を補助するものです。中小企業・小規模事業者が、事業承継(親族内/従業員承継など)、第三者承継(M&A)、PMI(M&A後の統合支援)、廃業・再チャレンジ(承継検討・実施での廃業支援を含む)などを実施する際の費用を支援してもらえます。
補助上限額ですが、事業承継促進枠は800〜1,000万円程度。PMI推進枠や特例枠では最大2,000万円までの枠も設定される場合があります。補助率は、原則1/2 または 2/3(小規模企業等)などの割合で経費を支援してもらえます。
対象経費は、設備投資、専門家費用(弁護士・税理士・M&Aアドバイザー等)、謝金、旅費、外注費などとなっており、「 後継者が決まって設備投資やデジタル化を進めたい」、「M&Aの専門家に支払う相談料や手数料を補助してほしい」、「M&A後の統合支援(PMI)を行いたい」、「後継者不在で廃業・再チャレンジを選択する」などといった場合に利用できる補助金です。
この他、地方自治体独自の事業承継支援補助金、事業承継関連の税制優遇(事業承継税制)など、早期の承継準備を支援する施策は多数あります。特に税制面では、一定期間内に事業承継計画を提出・実行すれば、自社株の相続税・贈与税が実質ゼロになる特例も2027年まで時限措置で用意されています。これらも活用しない手はありません。
上記のように、早めに事業承継に取り組むことで利用できる補助金・助成金の選択肢は広がります。資金面の支援を受けられれば、会社の「磨き上げ」もぐっと実行しやすくなるでしょう。
補助金申請には充分な時間と事前の準備が必要
『専門家を活用して心強い味方を持ちましょう』
事業承継と企業の磨き上げを成功させるには、専門家の力を借りることも検討する価値があります。士業だけでなく保険の専門家など事業承継に詳しい専門家は各種おり、専門家に相談・依頼するメリットよしては主に次の3点があげられます。
『経営課題の解消支援』
承継の際に具体化する様々な経営課題(財務改善、組織再編、人事労務、法務手続きなど)の解決の支援が期待できます。経営者一人では見落としがちな課題も、専門家の目で客観的に洗い出すことで、磨き上げに向けた確実な対応が可能になります。
『高度な専門知識の提供』
事業承継には株式や税金の扱い、補助金の制度要件などの専門知識が必要となります。例えば事業承継税制の適用や補助金申請書の書き方などは中小企業診断士や税理士などの助言が期待できます。これにより、知らなかったばかりに不要な損をしたり、手続きを誤ったりするリスクを減らすことができます。
『客観性の担保』
家族や社内では話しにくい承継問題も、第三者の専門家が支援することで中立的な立場でアドバイスができます。経営者も本音で話をしやすくなり、後継者との橋渡し役としての役割も期待できます。
中小企業診断士は経営全般のアドバイスができる頼れる伴走者であるだけではなく、必要に応じて税理士や弁護士、社会保険労務士など他の専門家とも連携してトータルでサポートすることが可能です。
専門家をうまく活用することで、結果的に早期の事業承継の実現や補助金採択率アップにもつながります。事業承継はほとんどの経営者にとって、初めての経験となりますので、専門家であるプロの知識や経験を積極的に活用して下さい。
おわりに:早期の事業承継準備で未来を切り拓こう
事業承継に二の足を踏む経営者は決して少なくありません。しかし、本稿で述べたように早めに準備を始めることで、多くの恩恵を享受できます。心理的なハードルは専門家の活用で乗り越えられますし、磨き上げられた会社は次世代にとって掛け替えのない財産となります。国の補助金・助成金という追い風も利用すれば、資金面の不安を和らげつつ理想的なバトンタッチが可能になります。
大切なのは、後回しにせず今から動くことです。事業承継は一朝一夕で実現することはありません。幸い、あなたの周りには力になってくれる支援制度や専門家がたくさんいます。「まだ大丈夫」と先送りにせず、ぜひ信頼できる専門家や支援機関に相談しながら、計画的に次世代にバトンを渡していきましょう。早期に動き出した分だけ、会社の未来は明るく拓けるはずです。今日の一歩が、会社の持続的な発展と円滑な事業承継への第一歩となります。共に未来を切り拓いていきましょう。
事業承継士、中小企業診断士 佐渡浩
