1. 事業承継の準備、“人”について考えて考える
事業承継の準備というと、税金対策や株式の移転、後継者の育成などを思い浮かべる方が多いと思います。後継者の育成も人に関することですが、従業員に関する準備も重要です。(後継者の育成についてはまた別で取上げます。)
ほぼ全ての会社に従業員がいて、日々の業務が回り事業が運営されています。経営資源の一つです。事業承継の際、「人」の面についても整えておくことで、安心・円滑な承継になります。
今回は、事業承継前に取り組んでおきたい「人」に関係する事項について取上げます。ぜひ、これからの準備について考える機会になればと考えます。
2. 雇用契約書はありますか?まずは“現状の見える化”を
意外と多いのが、「雇用契約書を交わしていない」ということです。特に家族経営や中小企業では、これまでの信頼関係で成り立ってきた分、形式的なものが整備されていないことがあります。
しかし、事業承継を機に新しい経営体制に移るとき、雇用契約が曖昧なままですと、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。そこでまず大切なのが「現状の見える化」です。
以下のようなことをチェックしてみましょう:
・雇用契約書は全員分そろっているか
・契約内容(労働条件、職務内容、勤務地など)は明確か
・口頭での取り決めに頼っていないか
そして契約書がない、現状と合っていない場合は、整えていくことが必要です。承継後の各従業員との雇用契約内容を考えることにもつながります。
3. 就業規則は“今の働き方”に合っていますか?
就業規則も、事業承継前に見直しておきたい重要なものになります。特に「昔作ったまま内容を更新していない」「誰も中身をよく知らない」といった状態ですと、承継後に生じるリスクがあります。
そもそも就業規則は、会社の“ルールブック”です。事業承継前に、現在の働き方や制度等と照らし合わせ、「今の実態に合っているか」をチェックしておく必要があります。
具体的には以下のようなことを確認してみましょう:
・勤務時間や休日、休暇制度が実態と一致しているか
・育児・介護休業、ハラスメント防止など法改正に対応しているか
・懲戒処分の基準などが曖昧でないか
ルールが整っている会社は、従業員に安心感与えます。また、承継時における労務リスクを考える上でも重要です。
4. “気持ちの引き継ぎ”も忘れずに〜従業員との信頼関係づくり〜
事業承継は、単に「代表が変わる」話ではありません。従業員から見れば、「自分たちの働く場所がどうなるのか」という大きな変化です。だからこそ、経営者として従業員に対して“気持ちの引き継ぎ”をすることも大切です。
たとえば、以下のような場面を考える必要があります。:
・事業承継の時期や方針をどのように伝えるのか
・雇用契約内容についてどのようになるかを伝えるのか
・後継者についてどのように伝えるのか
承継する後継者にとっても、従業員と良い関係を築くための機会として、丁寧に対応していく必要があります。
5. 事業承継士・社会保険労務士と一緒に、“安心のバトンタッチ”を
ここまで、事業承継前にしておく「人」に関する準備を見てきました。雇用契約、就業規則、そして従業員との信頼関係――どれも、承継後の会社の未来を左右する重要な事項です。
後継者が安心して経営に取り組める環境が整いますし、従業員にとっても「これからも安心して働ける」と思える職場になります。
こうした「人」に関する準備を一緒に進めていくため、事業承継士であり社会保険労務士でもある専門家をご活用ください。制度やルールを整えるだけでなく、「人の気持ち」に寄り添った支援をしていきます。専門知識と現場経験を持ったパートナーとして、ぜひご活用ください。安心して次の世代へバトンを渡すために、人の面からも整えて、未来につながる事業承継を一緒に行わせていただきます。
また、「一般社団法人つなぐチカラ」は事業承継士とWライセンスで、中小企業診断士、弁護士、税理士、司法書士、宅地建物取引士、フィナンシャルプランターという各分野の専門家がおります。トータルサポートも可能ですし、特に気になる分野のみのサポートも可能ですので、ぜひお気軽にお問合せ下さい。
も可能ですし、特に気になる分野のみのサポートも可能ですので、ぜひお気軽にお問合せ下さい。
事業承継士® 社会保険労務士 加藤有里